3月30日㈰は中京競馬場でG1高松宮記念が開催されます。今年は混戦ムードが漂っていて、穴馬好きにも魅力のあるレースになりそうです。今回は、ママコチャやナムラクレアを破る可能性を秘めた5頭をピックアップしました。
高松宮記念の展開と時計
普段レースの展開やペースを考える時、「出走馬の前半・後半3Fの持ちタイム」から予想しているので、ここで収集したデータを載せたいと思います。(採用するタイムは、高松宮記念と同じ芝1,200ⅿの走破タイムの平均を採用しています。)
ハイラップほど先行決着
高松宮記念 過去10年 前半3F・後半3F
直近5年は稍重~重で開催されることが多く、上りがかかるレースになっている印象です。
2016年と2019年は前半からハイラップでレースが進み、後半も速いタイムが出る展開となりました。差し決着になったのかと思いましたが、2016年は1着〜3着の4コーナーでのポジションは、「3番手・4番手・10番手」、2019年は「5番手・2番手・11番手」で、上位2頭は先行勢で決まっていました。
中京コースはタフなコースと言われるように、スタミナを序盤からすり減らす展開になると、先行からの持続力が活きる、ということかもしれません。
前半3F平均タイム TOP5
芝1200ⅿで5走以上している馬に限定してタイムを抽出したところ、前半3Fの平均タイムトップはサトノレーヴでした。どのコースでも安定して33秒後半で入る安定感があります。以下、ママコチャ、ビッグシーザーなど先行して押し切るスタイルの馬が上位にランクインしています。ここはレースの印象とあまりが差はありません。
上がり3F平均タイム TOP5
同じ条件で上がり3Fのタイムを抽出すると、トップはカンチェンジュンガでした。サトノレーヴとは対照的に、この馬はどのコースでも最後は必ずいい脚を使います。左回りでの好走歴があまりないのが気になりますが、ここまで「キャンッキャンの脚」を使えるのであれば、さすがに無視はできない印象です。
CBC賞勝ち馬ドロップオブライトは、前走(出遅れて敗戦)を除けばおそらく上がりタイムはメンバートップです。スローで32秒代、平均ペースでも33秒台半ばが使えるので、想定オッズ通りであれば超おいしいのではないでしょうか。どちらの表にもランクインしているキタノエクスプレスも要注目です。
ナムラクレアはどちらにもランクインしていません。G1を勝ちきれないのは、器用だけど抜けた長所がない部分が影響しているのかもしれません。
2025年のレース展開
抽出条件を少し緩和すると、前半3Fタイムのトップはウインカーネリアン(4走平均33.4秒)。おそらくこの馬が引っ張る展開になると予想します。ウインカーネリアンはぶっ飛ばして粘り切るタイプではないので、多少抑えても33秒後半で入るはずです。イメージとしては2017年のようなレース展開になるのではないでしょうか。2017年は1着セイウンコウセイは4番手から抜け出し、2着レッツゴードンキは後方待機→直線イン付き、3着レッドファルクスは内寄りで6番手の位置から抜け出してきました。
高松宮記念 魅惑の注目馬 5選
ナムラクレアとママコチャはみんな注目しているでしょうから、あまり人気にならなそうな5頭をチョイスします。
カンチェンジュンガ
昨年2月にオープン入りしてから長く脚踏み状態が続いていましたが、前走阪急杯でついに重賞初制覇を果たしました。3勝Cを小倉1200ⅿ・稍重で勝利しているのでタフな馬場になっても問題ありません。
器用なタイプではありませんが、オープン入りして以来ほとんどのレースで上がり最速をマーク。コースを問わずに豪脚を使える分、展開がカギになりそうです。今回は武豊Jが騎乗しますので、盟主のエスコートで最後の最後に外から飛んでくるかもしれません。
キタノエクスプレス
北九州短距離ステークスでは、道中5番手から直線で鋭い末脚を繰り出し、1分8秒5のタイムで快勝。使える上がり3Fのタイムは、高松宮記念出走予定馬の中でも上位に位置しており、人気より実力は上位だと思います。
昨年のCBC賞(G3)での敗戦は、直線の不利が影響していて参考外。テン良し・上がり良しのタイプなので、G1の舞台で好走する可能性は十分。極端な枠にならない限り、もはや無視はできません。
トウシンマカオ
JRA芝1200mの重賞を4勝している実力馬。2024年セントウルステークス(GⅡ)では、中京競馬場の坂を克服し、鋭い末脚で勝利を挙げました。京阪杯(GⅢ)を制するなど、コースを問わない万能スプリンターの地位を築こうとしています。
レースによって先行力と瞬発力を使い分ける器用な面も出てきています。実績と適性を考えれば、中京で行われる高松宮記念でも十分に好走が期待できる一頭です。
ドロップオブライト
2024年8月のCBC賞(GIII)では、3番手からの競馬で1着となり、重賞初制覇を達成しました。その後、同年11月の京阪杯(GIII)で6着、2025年1月の淀短距離ステークス(L)では7着と、勝ち星からは遠ざかっています。しかし、これらのレースでも着順の印象より安定したレース運びができています。
特にCBC賞で先行し押し切った勝利は、同じ舞台の今回は高く評価できます。高松宮記念では、内枠に入れたら上位進出も期待できるでしょう。
ビッグシーザー
2024年11月の京阪杯を制し、待望の重賞初制覇を達成しました。その京阪杯では、逃げたウインカーネリアンが作るタフな展開を物ともせず、直線3番手から抜け出す強い勝ち方をみせました。昨年の高松宮記念では7着に敗れるも、力をつけた今年はそれ以上の成績が出せるのではないでしょうか。
鞍上は大ケガからようやく本調子を取り戻してきた北村友一Jが継続騎乗。ジョッキーと共に、2025年を飛躍の年にしたいところです。
名馬クロニクル 高松宮記念
普段海外競馬をみない方でも、「短距離レース=香港」という印象を持っている競馬ファンは一定数いると思います。最近ではロマンチックウォーリアーが安田記念を勝ったように、短距離界における香港馬が脅威であることは、今も昔も変わりはありません。今回は、史上初の外国馬による高松宮記念制覇を達成した馬を取り上げます。
2015年王者エアロヴェロシティです
デビューからG1勝利まで
エアロヴェロシティは2008年にニュージーランドで生産された競争馬です。元の名前はエアロヴェロシティではなく、「ナイソソウォリアー(Nisoso Worrior)」という名前で、2012年にニュージーランドでデビューしました。ニュージーランドではデビュー戦に出走したのみで、翌年からは香港へ移籍します。そのタイミングで名前をエアロヴェロシティに改名したそうです。
香港移籍後はハンディキャップレースに出走し、移籍から1年半後の2014年5月にシャティンヴァーズ(香港G3)を制して重賞初制覇を記録。ここからエアロヴェロシティは短距離界のトップホースになっていきます。
2014年10月の国内レースを制し、前哨戦を挟んでG1香港スプリントに出走。レースは好スタートから先頭を奪いエアロヴェロシティが逃げる展開になります。4コーナーで1番人気ペニアフォビアら後続勢が一気に迫ってきましたが、直線でもう1段脚を使ってリードを守ると、最後はクビ差しのいで見事勝利。重賞初制覇からわずか半年での国際G1制覇となりました。
高松宮記念へ参戦!
2015年シーズンは、チェアマンズスプリント(2着)から始動し、JRAのG1高松宮記念に出走します。
レースはアンバルブライベンが逃げる展開になり、エアロヴェロシティはその後ろ2番手でレースを運びます。4コーナーで外からハクサンムーンが押し上げてきますが、盟主Z/パートンは焦る様子も見せず最内でじっとポジションをキープ。
直線では先に抜け出たハクサンムーンと、外から伸びたミッキーアイルの間に入り込み、直線は3頭の脚比べになります。直線までインで脚が溜まっていたエアロヴェロシティは残り100ⅿでハクサンムーンを捉えると、最後は半馬身抜け出して見事勝利。史上初・外国馬による高松宮記念制覇を成し遂げたのです。
日本と香港の関係性
その後のエアロヴェロシティは、2015年シンガポールG1のクリスフライヤーインターナショナルと2016年香港スプリントを制し、通算G1勝利を5つまで伸ばしました。騙馬のため種牡馬入りはできませんでしたが、当時のアジア競馬の短距離界を盛り上げた1頭であったことは間違いありません。
高松宮記念には、2018年ブリザード(5着)、2024年ビクターザウィナー(3着)など、香港の有力馬が定期的に参戦しています。昨年はロマンチックウォーリアーが安田記念を制しているように、香港馬のJRA参戦は今後も続いていくのだと思います。
極東の地から世界を目指す盟友として、日本競馬と香港競馬は今後も切磋琢磨する関係でありつづけるでしょう。